GRAPHNOTES

RAW動画とLOGを考える

日付:
2018年01月27日
カテゴリー:
撮影

RAWやLOGでの収録を行い、比較してカーブについて考えます。

REDやBMCC、MagicLanternなど民生機や個人プロダクションの予算でシネマが撮れるようになって久しいです。
RAW動画は、感覚的には動画というよりも静止画の連続のような感じなので、写真家にとっては親しみやすいと思います。

さて、ソニーのFS700なども外部レコーダーを使用することでRAW動画を撮る(いわゆるFSRAW)ことが出来ますが、BMDなどと比べるとちょっと分かりにくいです。
RAWはセンサーが受け取った情報をそのまま記録するイメージがありますが、FS+Shogunなどではカメラでガンマカーブを掛けたものを改めて12bit CinemaDNGで記録するという方式になっています。
これがどういうことなのか少し考えてみましょう。

RAWとJPEG

おなじみのRAWファイルですが、これはセンサーが受け取った情報をそのまま記録したものと考えましょう。
対するJPEGはそこから不要な情報を削り圧縮したものです。

センサーが画像の情報を受け取った時、14bitだと16,384階調で記録されます。しかしこんなに多い階調を表現できるモニターやプロジェクターはなく、また人間の目も認識できません。
人の目で認識できる限界とされるのは256階調くらいなので、これに落とし込めば十分です。

しかし、落とし込まれたJPEGは最低限の情報しか持っていません。ここから調整を行おうとすると破綻が起こりやすくなってしまいます。

カーブ(ピクチャープロファイル)は何のためにあるか

情報が減るため、ダイナミックレンジを保持するための工夫が必要

ここでA7Sを使って、ちょっと感覚的に迫ってみましょう。コントラストが多い画…例えば明るい窓のある室内とか、向こうのほうが晴れていてこちらが曇っている風景だとかを撮影するとします。今回は非常に暗い室内に小さなLEDのランタンがある風景を撮る状況になりました。

暗い場所を撮るなら絞りを開くなり感度を上げるなりして少し明るく撮り、後で減感すればOKです。
しかし明るくしすぎると、LEDのハイライトが飛んでしまいます。ハイライトを少し捨てるか、黒つぶれを捨てるか…、今回はLEDが飛ばないギリギリのところまで明るくセッティングし、暗い部分をあとで持ち上げることにしましょう。
Davinci Resolveのプライマリーホイールだけを使用して、見た目がなるべく近くなるように調整を行いました。また、ノイズリダクションは行っていません。

RAW(ISO200)

RAW(静止画)で撮ったものは暗部を持ち上げても破綻がほとんど感じられず、リッチな風合いとなりました。

RAW BMDfilmガンマカーブで表示

RAW カラーコレクション結果


RAWカラーコレクション結果 拡大

Cine1(ISO200)

ピクチャープロファイル(PP)のCine1 8bit422で出力・DNXHRで撮ったものは暗部を持ち上げると破綻が起こってしまいました。
Cine1はソニーのシネマ撮影用途の標準的なPPで、反射率18%のグレーをビデオ出力33%になるように露出を合わせた場合に、460%のダイナミックレンジが得られるガンマカーブとなります。
詳しくは公式のクリエイターズヘルプガイドにて公表されています。

Cine1

Cine1 カラーコレクション結果


Cine1カラーコレクション結果 拡大

Cine1+ブラックガンマ(ISO200)

今度は先程のPPのCine1にブラックガンマを当て、予め暗部をかなり持ち上げて記録してみました。こちらの方は破綻が大幅に少なくなり、RAWに少し近い見た目となりました。


Cine1+ブラックガンマ


Cine1+ブラックガンマ カラーコレクション結果


Cine1+ブラックガンマカラーコレクション結果 拡大

S-LOG2(ISO3200)

おなじみのS-Log2です。RAWと同じような感覚で収録できました。しかし感度が3200なのでノイズが多くなってしまいました。

S-LOG2

S-LOG2 カラーコレクション結果


SLOG2カラーコレクション結果 拡大

結果

やはり8bitに落とすことで、多くの情報が無くなっていることが分かりました。(しかもYUV422サンプリングによりソフトシャープネスも失われる)
しかし出力の時点でガンマカーブを当て、暗部を持ち上げる量を少なくすることで破綻を減らすことが出来ました。

ホイールを動かす量が少なければ少ないほど破綻は少なくなるというわけです。
つまり、逆にコントラストの低い画を納める場合はブラックガンマを使用しないほうが良い結果になります。

SONYのS-LOGやFSRAWはなんなのか

S-LOG

S-LOGはソニー版のLOGです。S-LOG2やSLOG3はベース感度が上がりますが、基本的にはガンマカーブの一つとして見て良いでしょう。
それに加えて…スチルカメラにはいわゆる「高輝度側・階調優先」などという名前の機能があります。
これはハイライトに低ISOを使用することでダイナミックレンジを拡張する仕組みですが、SLOGで感度が上がるのも同じようなものと思われます。

詳しくはSONYからテクニカルサマリーが公表されているのでこちらを参照しましょう。

S-Gamut3.Cine/S-Log3 and S-Gamut3/S-Log3 テクニカルサマリー V1.0

Q6. RAW 収録の際はどの色域とトーンカーブがあたりますか?

A6. RAW は撮像素子からの情報をそのまま収録するため、どの色域もトーンカーブも適用されません。RAW データは
常に 16bit シーンリニアで収録されます。 S-Log3 は 8/10/12bit 上で広いダイナミックレンジを効率的に記録するため
に設計されています。

S-LOG2はCine1より2ストップ程ダイナミックレンジが広がると思われます。色域設定が違うため異なる印象を受けますが、個人的にはCine1をそのまま拡張したような印象を受けます。
代わりに暗部のノイズが増えます。後で減感すると減らせますが、レンジは狭くなります。
もし暗部の感度を上げたくない場合や、レンジが必要でない場合は(可能であれば)Cine1等を当てる方がよいでしょう。

RAWと言っても

RAWと言っても16bit形式もあれば12bit形式もあります。

先程の実験の通り、リニアなRAWではカーブを当てておく必要はありません。
しかし同じRAWであっても16bit→12bitRAWのように収録する場合はカーブを当てる方が効率的なシーンが多いということが考えられます。
ただワークフローに依っては16bitであっても収録時にカーブを使用してもよいでしょう。

これでRAWなのにカーブを当てて収録する意味が分かったと思います。
これはFSRAWであってもスチルカメラのRAWであっても同じことです。情報が減ってしまう際に、効率的に情報を収めたい場合はカーブを使用し、シーンによってカーブを使い分ければ良いということです。

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