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生産者にとって批判は役に立つか

日付:
2017年05月03日
カテゴリー:
ディレクション, 雑記

クリエイターや企業が受ける批判の種類・質・目的について考え、対策します。

企業が商品・サービスを発表したり、クリエイターが作品を公開すると、ネットで批判に晒されることがあります。
「批判を受け入れてこそ生産者」「無責任な批判の相手をする必要はない」などの意見がありますが、善し悪しの判断をする必要はありません。
ここでは、生産者にとって批判が役に立つかどうかを考えてみたいと思います。

目次

目的を再確認する

なんのために公開したサービス・作品なのでしょうか?もしあなたが芸術家で、作品を作り上げることに全ての意味を求めているなら、一切の批判を気にする必要はありません。そのまま創作を続けましょう!

あなたが企業の新商品の担当者だったり、商業アーティストである場合は、セールスを上げる事やそれに繋げるための成果などが目的になっているはずです。
その場合、批判者=顧客となり、批判=クレームとなります。

批判の種類

クレームに有用性があるのは周知の事実ですが、果たしてどんなものであっても役に立つのでしょうか。
分類して考えてみましょう。

  1. サービスに対する苦情や改善要求
  2. 契約或いは法上の権利請求
  3. 攻撃

役に立つのは1.です。
そしてこれらは2つ以上が同時に行われる場合があります。

例えば、あなたが図を作成するソフトを購入したとします。使っているうちにこれが非常に使いにくいことが分かりました。


「使いにくいぞ!これを作ったやつはバカなんじゃないの!?」

怒れるあなたがSNSに書き込みを行いました。

「使いにくいぞ!」は問題を指摘し改善を要求しています。
しかし、「これを作ったやつはバカなんじゃないの!?」は攻撃(ただの悪口)です。
実はこの書き込みの前後の文には関連性がありません
開発者を攻撃することと改善要求することはまったく別の話だからです。


「買ってから気づいたけど△△のところが使いにくいなぁ。次は確認してから買おう…。」

今度は前向きなあなたがSNSに書き込みを行いました。

こちらは改善要求のみの内容です。失敗した経験を次に活かそうとしています。

批判の質について

攻撃的な性格と問題提起能力は関係がない

混同しやすいのですが、なんでもこき下ろすネガティブな人は特段問題を見つける能力に秀でているわけではありません。

ある研究によるとヒトは何でもポジティブに受け止めて好きだという「ライカー(liker)」と、何でもケチをつけて嫌う「ヘイター(hater)」に別れるという事象が確認されています。
ヘイターにとって商品の質は関係なく攻撃の対象となります。

攻撃は商品の品質ではなく性質に依る場合も多く考えられます。
例えばタレントのTwitterアカウントでも、荒れやすい人とそうでない人がいます。
荒れやすい性質を持ったタレントは品質や性質の改善より、顧客ターゲットをずらす事の方が効果的かもしれません。

手間を掛けずに生まれた批判は役に立たない

ネットでの批判(賞賛)は要件定義すら示されない例が多く、単なる攻撃も多いため質が高いとはいえません。
質の高い批判を行うには労力を必要とし、また質の高い批判者ほどそのことをよく分かっているため、安易に批判を行いません。

よって手間を掛けずに生まれた批判はあまり役に立ちません。
どうしてもこれらを利用したい場合は、批判を分類して収集します。これにより現状を把握することは出来ますが、情報の信頼性に乏しく質が低いためやはり品質向上・改善に役立てることは難しいです。

質の高い批判を得るにはどうするか

質の高い批判を購入する

漫画家には編集者が、ミュージシャンにはプロデューサーなどが付き、調整を行うというシステムがあります。

生産者に限らず、当事者は俯瞰した視野を持ちにくい性質があり、そのような場合は第三者の視点からの監査が大いに役に立ちます。
対価を払ってでもプロデューサーにオファーを行ったり、アンケートを取るなどの手段を取ることによって質の高い批判を得ることができます。

質の低い批判を減らす施策を行う

批判は同調圧力も孕んでいます。
ネガティブなレビューが増えると釣られてネガティブな意見が出やすくなり、逆も然りというわけです。
卑怯に見えるかもしれませんが、間接的にネガティブな意見が出づらい状態に持っていくのも手です。
ポジティブな意見=質の高い意見とは限りませんが。

まとめ

・批判は役に立つが、質の悪いプラットフォームで得られるものは現状把握のみに役立てるか、除外する。

・質の高い批判を購入する。

・批判と攻撃は関連性がない。

生産者も人間なので、攻撃を受け続けると危険です。
特に個人のクリエイターは作品ではなく、個人の人格まで狙われることになります。
質の低い批判は優先度を低く設定しましょう。

技術を盗んだり、既存のアイデアを組み合わせる事によって新しいものが生まれる事があります。 しかし今回はそういうことではなく、クリエイターが受ける誤解について考えてみたいと思います。

プロフェッショナルが受ける誤解についての記事はこちら

速い思考と遅い思考

ヒトは論理を積み重ねて行う「遅い思考」が苦手です。ネットで見たニュースなどに反応するために労力を割くのは嫌なので、速く結論を出そうとするのですが、これは贔屓の野球チームを応援するような単純な思考となってしまいます。最たる例が「良いor悪いの判断」で、更にこれには主語がありません。

例えば、「政治家が○○という発言をし炎上中」というニュースを読んだ時、速い思考が癖になっている人は政治家を「擁護するか批判するか」の決断をしてしまいます。
しかし絶対的な評価を読み手が行わなければならない決まりはありません。
政治のバックグラウンドには様々な事情があるはずですが、これらを調べ勉強するには相当な労力が必要となります。ニュース提供側もそれを分かっているので、労力を必要としない「黒か白か」の論調を使用します。

巷には速い思考の意見が溢れています。論理的思考は万能ではありませんが、世間の話題に振り回されてイライラしないためには大いに役立てることができます。

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